コーセー総合事務所では、中小企業診断士・特定社労士・行政書士として、老人介護施設の経営などの社会福祉事業活動を、経営診断、法人設立、行政への定期報告や人事労務までトータルにサポートしています。
1社会福祉法人とは
社会福祉法人は、社会福祉法に規定された社会福祉事業を行うために設立される法人です。
公益法人から発展した特別法人であり、公益性と非営利性を備えた団体です。
社会福祉事業の健全性を維持するため、社会福祉法24条が定める経営の原則等に従って事業を実施することが求められます。
2社会福祉法人化のメリット・デメリット
公益性が強い社会福祉事業を促進するため、原則として、社会福祉法人が行う社会福祉事業から生じた所得は非課税となり、収益事業から生じた所得にも軽減税率が適用されるなど、税制上有利な取り扱いがされています。
しかし、社会福祉事業で収益を得ることは原則として許されません。
設立に際しても資産要件が課され、設立後も行政による定期的な指導監督がされるなど、他の法人とくらべて厳しい規制を受けます。
3第1種/第2種社会福祉事業とは
社会福祉法人が実施できる社会福祉事業には、いわゆる第1種社会福祉事業と第2種社会福祉事業があります。
どのような事業が「第一種」「第二種」にあたるかは、社会福祉法2条に定義されています。
3.1第1種社会福祉事業とは
社会福祉事業のうち、特に公共性が高く、安定した経営が求められ、利用者保護の必要性が高い事業が第1種社会福祉事業に分類されています。
こうした事業の性質から、第1種社会福祉事業の経営主体は、国・地方公共団体または社会福祉法人に限定されています(一般の民間事業者は、第1種社会福祉事業を行うことができません)。
具体的には、特別養護老人ホーム、知的障害者構成施設、授産施設、婦人保護施設などが第1種社会福祉事業にあたります。
3.2第2種社会福祉事業とは
第1種社会福祉事業とくらべれば、利用者への影響が小さく、公的規制の必要性が低い事業は第2種社会福祉事業に分類されています。
第1種社会福祉事業と異なり、経営主体に制限はなく、都道府県知事に対する届け出ることで民間事業者でも第2種社会福祉事業を始めることができます。
具体的には、老人デイサービス事業、保育所、放課後児童クラブ、精神障害者支援センターなどが第2種福祉事業にあたります。
3.3社会福祉事業以外の事業
社会福祉法人であっても、有料老人ホーム経営などの公益事業や、不動産を活用して行う駐車場経営などの営利を目的とする収益事業を行うことができます。
ただし、主として行う社会福祉事業と関係する事業であること、社会福祉事業の妨げとなるものでないこと、公益事業または収益事業で生じた利益は社会福祉事業の実施に充てなければならないこと、といった制限があります。
4社会福祉法人の設立
社会福祉法人を設立するには、おおむね、(1)事業計画作成等の設立準備→(2)定款作成・申請→(3)所轄庁の設立認可→(4)設立登記という手続きを踏む必要があります。
加えて、実施しようとする社会福祉事業の種類に応じて、許可(第1種社会福祉事業の場合)または届出(第2種社会福祉事業の場合)をする必要もあります。
その他、社会福祉法人の設立にはいくつか注意すべき事項があります。
4.1設立に必要な資産など
法律上は0円でも設立できる株式会社と異なり、社会福祉事業を安定的に継続するため、社会福祉法人の設立には資産要件が設けられています。
原則として、年間事業費の12分の1以上に相当する現金、預金などがなければ、社会福祉法人の設立は認められません。
また、社会福祉施設を経営しない社会福祉法人は、原則として1億円以上の基本資産がなければ、設立が認められません。
その他、社会福祉事業の公益性を確保するため、設立時から財産の取り扱いについて特別な取決めが必要とされています。
4.2社会福祉法人運営メンバーの資格
社会福祉法で定められた社会福祉法人の主な運営メンバーには、(1)評議員や(2)理事および(3)監事がいます。
いずれの役職に関しても、社会福祉事業の実施について十分な知識を持っていなければならないことなどが定められています(同法39条、44条参照)。
社会福祉法人の設立は、通常、こうした資格を備えたメンバーが設立時役員となってすすめられます。
なお、関係行政庁の職員が社会福祉法人の運営メンバーとなることは、原則として、好ましいものではないとされています(社会福祉法61条(公私分離の原則)参照)。
4.3定款作成と認証
設立時役員はまず設立しようとする社会福祉法人の定款を起案しなければなりません。
定款には、当該法人の(1)目的、(2)名称、(3)行おうとする社会福祉事業の種類、(4)事務所所在地、(5)理事・評議員など役員に関する事項など、必ず記載しなければならない事項があります。
必ず記載しなければならない事項を欠いた定款は法律上無効になります。
作成した定款は、市長、都道府県知事または厚生労働大臣(まとめて「所轄庁」と呼ばれます)に対して提出し、当該社会福祉法人の設置について認可を受ける必要があります。
4.4社会福祉法に基づく事業認可申請
社会福祉法人設置それ自体についての認可とあわせて、これとは別に、実施しようとする社会福祉事業の種類に応じて、許可申請(第1種事業の場合)または届出(第2種事業の場合)も必要です。
社会福祉法人の設立後、実施する社会福祉事業の内容に変更が生じたり、廃業する場合にも、あらためて許可または届出が必要です。
4.5介護保険法その他の法令に基づく各種申請
社会福祉事業として、介護保険法が適用される高齢者向け施設型介護サービスを行おうとする場合、社会福祉法に基づく設立認可、事業許可・届出だけでなく、介護保険法に基づく指定事業者認定のための申請も必要です。
その他、老人保健法、児童福祉法、精神保健福祉法や医療法など、行おうとする社会福祉事業に応じた許認可手続きが必要です。
実施事業に変更が生じた場合なども同様です。
4.6補助金申請手続き
社会福祉事業施設整備のための国庫補助、公益補助
5社会福祉法人の運営手続
社会福祉事業の公益性から、社会福祉法人は、その運営について、他の法人よりも厳格な規制に従う必要があり、行政による指導監督を受けることもあります。
5.1行政への事業報告義務
社会福祉法人は、毎年、都道府県知事などの所轄庁に対し、下表のような計算書類等を提出し、社会福祉事業が適正に実施されていることを報告する義務があります。
所轄庁への提出義務※1 | 公表義務 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
有無 | 根拠規定 | 有無 | 根拠規定 | |||
計算書類等 | 計算書類: ・貸借対照表 ・事業活動計算書 ・資金収支計算書) |
〇 | 45条の32第1項・第2項 | 〇 | 59条の2第1項3号・省令10条3項1号 | |
計算書類の附属明細書 | 〇 | – | ||||
事業報告書 | 〇 | – | ||||
事業報告の附属明細書 | 〇 | – | ||||
監査報告 (会計監査報告含む) |
〇 | – | ||||
財産目録等 | 財産目録 | 〇 | 45条の32第1項各号 | – | ||
役員等名簿 | 〇 | 〇 | 59条の2第1項3号・省令10条3項2号 | |||
役員等報酬等支給基準 | 〇 | 〇 | ||||
事業の概要等 | 現況報告書 | 〇 | 〇 | |||
事業計画書 | ※2 | – | ||||
算定シート | 〇 | – | ||||
社会福祉充実計画 | 〇 | 55条の2第1項 | 〇 | 事務処理基準 | ||
備考 | ※1 備置き・閲覧させる義務もあります(法令の根拠は省略)。 ※2 定款で作成することとした場合に限る。 |
行政への提出書類は、理事会・評議員会の適切な運営手続を経て作成される必要があります。
事業の適正な実施に問題があると考えられた場合、行政による指導監督がされる場合があります(随時指導監査)。
その他、定期的に運営状況を監査するための監査(一般監査および特別監査)も行われるため、都度、対応が必要です。
5.2社会福祉充実計画の策定
社会福祉充実計画とは、簡単にいえば、社会福祉事業で生じた利益を社会福祉事業の促進のために再投資する計画です。
社会福祉法人が社会福祉事業で利益を得ることは原則として許されません。
利益が生じた場合、社会福祉充実計画を策定した上で、行政による承認を受け、承認を受けた計画に従って利益を解消していく必要があります。
6社会福祉法人の経営分析
従来、社会福祉法人は、多額の補助金と確実な収入源に守られていました。
しかし、平成12年から始まった介護保険制度では当初から民間企業の参入を認め、平成17年には「ゴールドプラン」が終了、同年の介護保険法改正を機に異業種の参入が相次ぎました。
社会福祉事業は、自己責任での経営を前提として、厳しい環境の変化にさらされています。
他方で、社会福祉事業の実施は、その公益性の高さから、種々の規制・保護や助成と切っても切り離せません。
社会福祉法人は、複雑に変化する経営環境の変化に応じた経営分析に基づき合理的判断を継続する必要があります。
7社会福祉法人サポート
コーセー総合事務所では、社会福祉法人の設立・経営等に関して以下のようなサービスを提供しています。
個別の手続きに関するご相談も承りますので、お気軽にお問い合わせください。
【社会福祉法人設立・運営サポート手続項目】
設立フルサポート
継続サポート
・合併、解散その他事業承継(M&A)
・設立時定款作成、同認可申請
・変更定款作成、同認可申請
・内部諸規定作成(就業規則その他運営上必要な書類)
・理事会、評議員会の管理運営サポート(招集通知・提案書作成・発出、議事録作成)
・各種助成金・補助金申請、福祉医療機構融資申請
・事業完成報告書等の作成・提出
・社会福祉充実計画の策定・承認申請
・介護施設の設置(特別養護老人ホーム)
また、社会福祉法人の設立などに関して、以下の個別ページにてさらに詳しくご紹介しております。
実務ご担当者様その他法人運営に関して疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。